シリンダーヘッドコンディション(シートカット編)
こんばんは、ディンクスの中村です。
前回から引き続きにて、今回はシリンダーヘッドコンディションの後編・・・
(バルブシートカット)をご紹介します。
精密寸法で製作されたバルブガイドで 入れ替えを行った前回・・・
シリンダーヘッドのコンディションは、エンジンの燃焼状態に大きく直結する為
オーバーホールの際には確実に内燃機加工を網羅しておきたいところです。
4サイクルエンジンにおいては、このシリンダーヘッドの状態を健康に保つ事で
調子が全く異なって来るため、かなり重要なセクションだと言えるんです。
その為に必要な重要工程が バルブガイドを入れ替える 入れ替えないに掛かわらず
もう一つのメニュー、バルブシートリングのカット 通称シートカットがあります。
バルブの開閉弁としての密閉性能は、このシートリングとバルブフェイスとの
”あたり” により、性能を大きく左右します。
この密閉性 いわゆるシール性能が良ければ良いほど、ガソリンエンジンの燃焼は
健全に完全燃焼しますから、トルクや最高出力への影響はもちろん、燃費向上や
排気ガスの濃度にまで大きく影響を及ぼすものなんですが、走行を重ねるにつれ
このシール性能が低下して行く事からシートカットの必要性が求められるのです。
シートリングは消耗して来るとあたり面の幅が広くなり、カーボンの食い込みなども
侵食してバルブフェイスとのシール性能が著しく低下します。
そのシール性能を従来の健全な状態にする為、シートリングの三面をそれぞれ精密な
角度 60度・45度・30度でカットする工程がバルブシートカットなんです。
スズキ製のオートバイ、油冷エンジンと呼ばれる4バルブのシートカット工程・・・
1990年代~2000年代にかけて輩出された このスズキ油冷エンジンヘッドの
バルブシートカットも、ディンクスは得意科目の中の一つ。
スイス MIRA社製のシートカットマシン VGX-21は、フレキシブルワイヤー
バリオドライブで駆動する高精度追求型専用機。
その昔、テーパー角が異なる複数種の砥石でシートカットしていた頃を思い出して
思わず苦笑い・・・ (;^_^A
もちろん その砥石でのシート研磨がダメな訳ではないのですが、VGX-21での
シートカットを知ってからは 能率と精度の面でその差は隠せられずと感じました。
ちなみにこのVGX-21、シートカットだけでなく密閉性能を検査するバキューム
機能も備わってまして、その辺のお話は また後日ご紹介しますね。
これがシートカット専用の刃物、ワンアクションプロフィールの三面バイト・・・
砥石ではなく刃物で加工する作業で、精密度を追求するのに欠かせない VGX-21
専用のバイトです。
軸真を導く、パイロットと呼ばれるこのシャフト・・・
加工物にあわせて刃物とパイロットを選択し、VGX-21に取り付けて加工します。
パイロットは加工精度向上の為にいくつか種類を用意してますが、これらは大変
貴重なアイテムで、一つひとつ緻密な精度と硬度で出来ている高額なツールです。
こちらは、TOYOTAセリカGTFour、3Sのシリンダーヘッド。
シートリングレス構造でアルミ材に直接溶射されたレーザークラットである事から
最新の注意を払って 極最少限のカットを施す非常にテクニカルな仕事も・・・
チェイサーやマークⅡ、70スープラに代表される 1JZシリンダーヘッド。
シートリングが圧入されている一般的なものですが、多気筒エンジンならではの
バルブセット長にシビアな仕上がりが求められるところ・・・
このバルブセットの長、また別の意味で重要な要因になるのですが、そのお話も
いずれ改めてご紹介したいなと思います。
このバルブシートカットは、レーシングマシンなどではそれこそ毎レースごとに
シートカットだけでもと施されるほど、その位 エンジンの調子に直結する工程。
研磨し続ければ当然、シートリングは僅かながらも減って行きますが、それでも
シートカット後のエンジンの調子は段違いに向上するので、レーシングマシンが
毎レースごとに作業すると言うのは頷ける話でもあるんです。
パワーだけでなく、全域で調子も良くなる・・・
もちろん、完全燃焼が促される事から排気ガス濃度も低減すると言う、それこそ
いい事づくめの加工と言えるでしょう。
エンジンを分解した際には是非、このシートカットだけはお勧めしたいですね。
全然関係ない話になりますが
「毎回10枚以上もの画像で全力投球のブログ書くの やめた方がいいすよ」と
業者さんや知人達から助言されまして、正直 (まぁ確かに きつい・・・ ) と
感じてます・・・ (;^ ^A
てな訳で、次回より もう少しボリュームを下げて更新させて頂きます <(_ _)>
皆さん引き続き、よろしくお願い致します <(_ _)>