ツインプラグ化は本当に万能で優秀なんです(後編)
こんばんは、ディンクスの中村です。
夜23時・・・
帰宅後に仕事を持ち込むと女房にブツブツ言われるので、23時頃 女房が寝静まったのを
確認してからPC開いて書いてます・・・ (;^ ^Aフゥ
おかげ様で少し早めに更新できました ♪
前回に続き、ツインプラグ加工(後編)です。
ツインプラグ加工の最たる目的はエンジンの出力アップにありますが、レース用車両では
よりハイパワーな出力を求めて圧縮を上げるため高圧縮化を図ります。
ところが高圧縮化に伴い燃焼室での異常燃焼、所謂デトネーションが起こり易くなるため
然るべき対策が必要となるのですが、その手法の一つに、このツインプラグ化があります。
上記画像のピストンは、ディンクスの母体となる会社ノーブレストのオートバイ部門
サンクチュアリーのZレーサーに使用する事となったDiNxオリジナル鍛造ピストン。
まだコーティング前の状態ですが、こちらの方が形がわかり易いのでお見せしました。
メイドインジャパンクォリティーの高品質なピストンで、このピストンの話はまた後日
させて頂きますが、画像のピストンに関しては完全レース専用として存在しているもの。
ピストントップの、コンプレッションハイトと呼ばれる部分のボリュームが非常に高く
極端な高圧縮仕様のエンジンになるため出力アップは果たせるものの、先ほど説明した
デトネーション、異常燃焼が発生する為ピストンブローを起こし易いリスクもあります。
燃焼室内での火炎伝播性能を向上させる事で、デトネーションを抑制する事ができる為
ツインプラグ化は高圧縮なエンジンに効果がある訳なんです。
前回 シリンダーヘッド燃焼室側から始まりました、ツインプラグ加工・・・
気筒間はYZ500-WRのプログラムに沿って自動送りで位置決めされ、穴が貫通したら
タップでネジ切りをするのですが、ネジの切り始めだけ手動で食わせてやって、その後は
低速の自動回転でタップが入って行きます。
続いては シリンダーヘッドをひっくり返して、上面からのエンドミル加工・・・
ベッドに固定された治具は触らず、ヘッドがセットされる位置そのものは先程と全く
同じで、裏表だけが返された状態で切削開始。
追加されるスパークプラグ座面に適した径のエンドミルで、フィンの一部も削りながら
こちらは一発工程。
表裏のみの組み換えなので、YZ500-WRのプログラムに沿って 可動式のTスロット
テーブルが自動で4気筒のプラグ位置を導きますが、Z軸ストロークだけは手動で切削。
斜めに開いているネジ穴がノーマルのプラグ穴で、そのネジ穴の横に真っ直ぐ開いて
いるのが 加工で設けた二つ目のプラグ穴・・・
細身のC規格プラグを使用する事で、狭い空間でも無理なくプラグを取り付けられる
ようにしています。
ツインプラグ加工が完成したシリンダーヘッド・・・
皆さん意外にご存知ないのですが、ツインプラグ化は火炎伝播性能がまるで違うため
予想以上に沢山のメリットがあって 本当に万能で優れた手法なんです。
出力アップはもちろん
ピストンブロー抑制(高圧縮化によるデトネーション抑制にツインプラグ化は効果大)
燃費の向上(完全燃焼するが故に、出力が上がるのと同時に燃費もかなり向上します)
振動の低減(完全燃焼化は安定した燃焼状態を促す為、エンジンの振動も低減します)
などなど、とにかくメリットが多く 更に最近では応用例として・・・
例えば、同じカワサキ製のスポーツバイクZX-10Rのスロットルボディを取り付け
気化器をキャブレターからフューエルインジェクションに・・・
従来の排気ポート注入ではなく、エキゾーストパイプに2次空気導入を設けてやっても
1970年代の、それこそ炭を吹いて走っている様な高濃度排気ガスのエンジン車でも
排気ガス濃度が大きく低減できる事が証明できたんです。
1970年~90年代辺りに生産された年式の車両は、エンジンのオーバーホールを
必要としている個体も多く、昨今の旧車ブームも手伝って、二輪車も四輪車も旧車の
中古車市場が時代に逆らい大きく成長しています。
車もバイクも、そもそも中高年層が好んで乗る傾向にあり、若かりし頃にあこがれた
懐かしい乗り物に人気が集中するのは理解できるのですが、それら旧年式中古車両の
登録台数が年々増加傾向にあるのは間違いないと思え、もはやニッチマーケットとは
呼べない規模になっているでしょう。
当然、旧い車やバイクの排気ガスは 最新のガソリン車よりも高濃度な排気ガスを排出
していますが、もしも それら旧年式車両の排気ガス濃度を低減できたなら・・・
母体会社ノーブレストが先に出願した「旧年式車の排気ガス低減化」の特許において
最も重要な根幹となる ”精密内燃機加工”をディンクスが下支えしているんです。
レースで速さを求めた技術の一つ ツインプラグ加工が、実は環境にも優しかった。
ましてや、最も高濃度な排気ガスを多く排出してる旧年式車両に適しているのだから
特許の使い道はともかく、これを推奨できたなら内燃機加工業界も社会貢献できる。
ガソリンエンジン車のオーバーホール技術や特殊加工がグリーン化に役立つんです。
今でも尚、日本中の旧車から排出されている排気ガス濃度を大きく低減させられたら
実はEVシフトへの反発が水面下で続く実需要の中、カーボンプライシングが実行
されようとする社会において 内燃機関を悪役にする事なき役割を果たせるでしょう。
何度も言いますが、ツインプラグ化は本当に万能で優秀なんです (^^)/
= 動画 =